2019年06月27日

【後編】個に応じた発達支援―ペアレント・トレーニングを採り入れてみて―

前回の記事「【前編】個に応じた発達支援―ペアレント・トレーニングを採り入れてみて―」の第2弾。教育学と心理学の観点から,「新たなトークンシステムを活用した効果」及び「次のステップに向かっての取り組み」等を記述しております。










 



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生きる自分への自信を持たせる「鍛地頭-tanjito-」副塾長の住本小夜子です。






前回の記事「【前編】個に応じた発達支援―ペアレント・トレーニングを採り入れてみて―」の続編です。種々の視点からの育児・教育支援についても記述しております。一瞥いただければ幸甚です。












目次

1 新たな刺激が必要

2 それはそれ,これはこれ

3 CCQによる指示

4 兄妹で一緒に取り組む

5 新たなトークンシステムを活用した「自己評価」・「他者評価」の効果

6 次のステップに向かって








5 新たなトークンシステムを活用した「自己評価」・「他者評価」の効果










息子と娘の目標(トークンシステム)









息子と娘,それぞれの目標を記入した用紙(上掲写真:「息子と娘の目標(トークンシステム)」)を作成し,いつも目に付くリビングの壁に貼り付けました。これまでは,息子だけが取り組んでいたトークンシステムですが,今回から娘も一緒に取り組みます。




息子と娘それぞれの目標は,次のとおりです。



《息子の目標》


    • 字をていねいに書く

    • やることがさき(スケジュール)

    • だいじなやくそく  



筆者注:「だいじなやくそく」の詳細については,次の「関連ブログ記事」をご覧ください。





【関連ブログ記事】

「自閉スペクトラム症である息子本人が障がいを受容したとき」(住本小夜子,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2018.10.19)








《娘の目標》




    • あいさつをする

    • おてつだい

    • のこさずたべる






仕組みは,




    1. 日ごと(就寝前)にできたかどうかを自己及び他者評価。目標をクリアしていたら,それぞれの項目に「☆(星)シール」を貼る。

    1. その日の目標を3つ達成できていたら,はらぺこあおむしの「ご褒美シール」を専用のノートに1枚貼る。

    1. 「ご褒美シール」が3枚溜まったら,ガチャガチャ1回。





評価については,自分で自分を評価(自己評価)するとともに,息子と娘がお互いを評価(他者評価)し,最後に私が息子と娘の自己評価と他者評価とを見て,最終的な評価を行います。




ガチャガチャの中身(ご褒美)は,事前にこどもたちと話し合って決めました。自分がしてほしいこと,(家族等で)一緒にやりたいことを中心に考えました。例えば,「ままごと15分」「スペシャルタイム15分※2」「ドーナツを買ってもらう」などで,中には「こちょこちょ(くすぐり)タイム15分」(こどもたちからの要望で,スキンシップです(笑))というものがあります。とにかく,息子と娘にとって楽しいことや嬉しいこと,わくわくすることをご褒美としました。











シールを貼る息子と娘














6 次のステップに向かって





この記事を書きながら,ふと気づいたことが1つありました。それは,こどもだけではなく,私も一緒にトークンシステムに取り組むことです。家族みんなで取り組めば,より一層大きな効果が得られるかもしれないし,これまで気づかなかったことも見えてくるかもしれない。「思い立ったらすぐ行動!!」ということで私のトークンシステムも追加した次第です。




《私の目標》




    • えがお

    • だっこ:こどもたちとのスキンシップを大切にするということ。

    • お話:こどもたちとのコミュニケーションを大切にするということ。





私も加わったトークンシステムの結果については,追ってブログ記事に認(したた)めたいと思います。









親子で取り組むトークンシステム









さて,我が家に採り入れたペアレント・トレーニングですが,そのプログラムを,そのプログラムに対する一般的な解釈のまま採り入れていたわけではないのです。ペアレント・トレーニングそのものと述べるよりも,その採用には課題があるのです。




ペアレント・トレーニングは,「褒める」ことが大前提となっています。すなわち,一般的には「叱ってはいけない」と捉えられているということです。ペアレント・トレーニングを勉強された方ならば必ずと言って良いほど直面する,「何があっても叱ってはいけないのか?」という課題です。




住本家の「家庭の教育方針」には,息子が生まれてから徹底して指導している項目があります。






1 自他共に傷つける行為(暴力・悪口など)


2 物事の順序(列の順番など)を守らないこと


3 (出してはいけないところで)大きな声を出すこと


4 大人の指導を無視すること




これらの項目を設定した背景には「道徳教育」があります。










どう‐とく〔ダウ‐〕【道徳】


1 人々が、善悪をわきまえて正しい行為をなすために、守り従わねばならない規範の総体。外面的・物理的強制を伴う法律と異なり、自発的に正しい行為へと促す内面的原理として働く。




2 小・中学校の教科の一。生命を大切にする心や善悪の判断などを学ぶもの。昭和33年(1958)に教科外活動の一つとして教育課程に設けられ、平成27年(2015)学習指導要領の改正に伴い「特別の教科」となった。




3 《道と徳を説くところから》老子の学。




デジタル大辞泉の解説,コトバンク(2019.6.17 アクセス)










この道徳については,幼児期からのしっかりとした指導・教育が必要です。なぜならば,幼いころに指導・教育されたことは,当該のこどもの成長に多大な影響を及ぼすからです。




「(身体的及び心理的な)暴力を(幼少期から)許し続けてしまったら,(大人になっても,身体的及び心理的な)暴力で解決することしかできない。」




「(幼少期から)物事の順序を守ることができなければ,(大人になっても)どこにいても秩序を乱してしまう。」




この世には,「(これも最近塾長がよく口にする)物心二元論の残滓としての自我中心主義」を地で行く数多くの手法としての「育児」や「教育」と呼ばれるものがありますが,いずれの手法においても「道徳(性)」を抜きに語れば,それは〈育児〉や〈教育〉ではなくなってしまうのです。他のこどもに暴力を振るう我が子を指導しない/指導できない/「のびのびと育てる」というスローガンを掲げ,「いけませんよ。」と軽く注意を促す程度の様態を「育児」や「教育」と呼ぶ有様は,最早〈育児〉や〈教育〉を取り沙汰する次元にはなく,蛮行に加担する〈蛮行〉でしかありません。










我が国の教育は,教育基本法第1条に示されているとおり「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われ」るものである。人格の完成及び国民の育成の基盤となるものが道徳性であり,その道徳性を育てることが学校教育における道徳教育の使命である。平成25年12月の「道徳教育の充実に関する懇談会」報告では,道徳教育について「自立した一人の人間として人生を他者とともにより良く生きる人格を形成することを目指すもの」と述べられている。道徳教育においては,人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を前提に,人が互いに尊重し協働して社会を形作っていく上で共通に求められるルールやマナーを学び,規範意識などを育むとともに,人としてよりよく生きる上で大切なものとは何か,自分はどのように生きるべきかなどについて,時には悩み,葛藤しつつ,考えを深め,自らの生き方を育んでいくことが求められる。




小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編,文部科学省,平成27年7月(2019.6.17 アクセス)…b








道徳的価値について自分との関わりも含めて理解し,それに基づいて内省し,多面的・多角的に考え,判断する能力,道徳的心情,道徳的行為を行うための意欲や態度を育てるという趣旨を明確化するため,従前の「道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深め」ることを,学習活動を具体化して「道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考えを深める学習」と改めた。さらに,これらを通じて,よりよく生きていくための資質・能力を培うという趣旨を明確化するため,従前の「道徳的実践力を育成する」ことを,具体的に,「道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる」と改めた。




前掲書b










こどもが幼い頃から普段の日常生活の中で,最も近くに存在する保護者が〈指導・教育〉すること,それが道徳性を身に付ける上で大切な根幹ではないでしょうか。「(道徳性は)幼稚園や学校といった集団生活の場で身に付くものだから。」と,つまり,先生に任せておけば良いと言わんばかりに,こどもの近くに存在する保護者が傲岸不遜(ごうがんふそん)な態度でいると,最大の被害者となり得るのは, 幼少期に当該のこどもたちを取り巻く環境下で,大人たちから何も教わらなかった故に,集団生活の中で狼狽(うろた)えるしかないこどもたちなのです。





こうした考え方を下敷きにして,批判的思考法(クリティカルシンキング)※3でもってペアレント・トレーニングを俯瞰するとき,そこには「個-集団」の図式が検証軸として浮上してきます。「個」とは「こども―保護者」関係を,「集団」とは「こども∈(保護者を除く)他者世界(こどもたちが帰属するそれぞれの集団,例えば,保育所,幼稚園,学校,学習塾,スポーツ少年団など)」を意味します。




これらの連関性をペアレント・トレーニングに当て嵌めてみると,ペアレント・トレーニングは主に(直截的には)「個」の連関性の枠組みにあると言えます。換言すれば,ペアレント・トレーニングは(直截的には)「こども∈他者世界」の範疇外に位置するトレーニングであることになります。ただし,当塾としては「「個」/「こども∈他者世界」」の構図で描く二項対立的な関係性ではなく,「こども∈他者世界」を意識した「個」のトレーニングとしてペアレント・トレーニングを捉えるべきだと考えています。平たく述べれば,我が家だけの家庭等の教育(以下,「家庭等教育」と表記します。「家庭等」と表現する理由は,「家庭」ではないが,「家庭」に相応する環境で育つこどももいるからです。)を意識し行うのではなく,こどもが様々に所属する家庭等外の集団性(生活)を意識した家庭等教育を行わなければならない,すなわち,家庭等の中だけでこどもを「良い子」にしてしまえば,家庭等外ではどうでも良い(他人任せ)という家庭等教育を行ってはならないと考えているのです。




ですが,現実はそうではありません。ペアレント・トレーニングを経験された多くの方が 「何があっても叱ってはいけないのか?」 との疑問をお持ちになることが顕著な左證(さしょう)で,ペアレント・トレーニングの講習を受けられた方は無意識裡に 「「個」/「こども∈他者世界」」の構図で描く二項対立的な関係性に気づかれており, 「こども∈他者世界」」の必要性を痛感しながらも,「個」の連関性が(結果的に)強調されるペアレント・トレーニングの「語り」によって,自らの意識を「個」に強引にも向けなければならないジレンマを感じておられるのです。ただし,こうしたジレンマはペアレント・トレーニングの講習を受けられた方のそれぞれが心の裡に抱かれている感情であって,表向きにはペアレント・トレーニングの「語り」とその講習を受けられる方の「語り」によって生産される「何があっても叱ってはいけない。」(=ペアレント・トレーニングの「語り」とその講習を受けられた方の「語り」とがそれぞれ予期せぬところで醸成した〈語り〉)が作り出した〈叱ってはいけない言説〉の権威性に服従してしまっているということが本当のところなのでしょう。そして,そうした〈言説〉がペアレント・トレーニングだけではなく,巷間に流布しているのが現状です。







筆者注:なぜこのような「家庭等外ではどうでも良い(他人任せ)という家庭等教育(我が子・家等だけ良ければ良い家庭等教育)が行われたり,「〈叱ってはいけない言説〉」が生成されたり,流布したりするのか,これらの理由については,後日,塾長がブログでお示しいたします。







こどもは決して家庭等の中だけで育つものではありません。それは全ての大人が首肯(しゅこう)されることです。こどもは発達段階を逐次経ながら,それぞれ種々の集団に所属し成長していきます。ですから,家庭等での〈個の教育〉と〈集団での教育〉は1本の水脈のごとく連動しており,決して分断されるものではありません。仮に,分断が是であるならば,こどもたちの発達段階は中途で分断されることになるでしょう。それでは人格形成を成し得ません。〈個のアイデンティティー〉など育つはずがないのです。



だからこそ,各家庭等で行う〈家庭等教育〉はその先に必ず行われる〈集団での教育〉を想定(意識化)したものでなければならず,〈家庭等教育〉と〈集団での教育〉との均衡(バランス)を考えた《教育》が重要であり,必要であると言えるのです。










1 集団指導と個別指導の意義


 集団指導と個別指導については、集団指導を通して個を育成し、個の成長が集団を発展させるという相互作用により、児童生徒の力を最大限に伸ばすことができるという指導原理があります


 そのためには、教員は児童生徒を十分に理解するとともに、教員間で指導についての共通理解を図ることが必要です。


 なお、集団指導と個別指導のどちらにおいても、①「成長を促す指導」、②「予防的指導」、③「課題解決的指導」の三つの目的に分けることができます(図表1-4-1参照)














(1)集団指導と個別指導のバランス


 教育の原点は、端的に言うと、一人一人の児童生徒の「生きる力」を伸ばすことです。


 このことについては、「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。」(教育基本法第1条)や「個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる。」(教育振興基本計画)からも明らかなことです。そして、一人一人の児童生徒の個性を大切にして、「生きる力」を伸ばすために働きかけをすることが生徒指導です。


 学校の教育活動において、一人一人の児童生徒の生きる力を伸ばすためには、集団指導と個別指導の両方が必要です。 「学校は社会の縮図である」と言われます。多様な他者とともに、よりよい生活や人間関係を築こうとする態度や基本的な生活習慣の確立、また、公共の精神など社会生活をおくる上で必要な力は、集団での活動を通してこそ伸ばすことができます。換言すると、人は集団や社会とのかかわりを欠いては、様々な問題を解決する力を得ることはできないということです。このことから、教員は児童生徒に発達の段階に応じて、段階的に社会的存在としての人間の「私」性の側面のみならず、「公」性をも併せ持っていることを意識させることが重要です




前掲書c,p.15










上記の引用は,学校教育のフレームの中で語られたものではありますが,「個別指導―集団指導」の教育観は,先述の「〈個の教育〉―〈集団での教育〉」の教育観とほぼ通底していると言って過言ではありません。そして,ここで留意しておかなければならないことは,両者の教育観は決して「個別指導/集団指導」,「〈個の教育〉/〈集団での教育〉」と二項対立的な思考性を有していないということです。「バランス」なる言表に表象化されているように,それぞれの「項」は共時性・相互補完性を保つ,持続可能な〈教育〉であるということを肝に銘じておかなければならないのです。




ですから,我が家では,一般的なペアレント・トレーニングをそのまま取り入れるのではなく,それを改造して〈我が家流のペアレント・トレーニング〉を実施しているというのが本当のところなのです。









〈我が家流のペアレント・トレーニング〉を支える考え方等




    • 「道徳教育」を基底にしている。

    • 「〈個の教育〉―〈集団での教育〉」の教育観に根付いている。

    • 「鍛地頭-tanjito-」の〈ガイダンス・カウンセリング〉(=「教育学」と「心理学」からのアプローチ)の考え方を採り入れている。






【関連ブログ記事】

「塾長の述懐 第6回(2019.4.21(Sun.))」(小桝雅典,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2019.4.23





要するに,「こども―保護者」間及びその場のみのコミュニケーションにとどまらず,こどもの将来を見据えた持続可能な〈育児・教育支援〉というわけです。











世のこどもたちの健全な成長・発達を願い,その支援をより良いものにするため,現在,私は発達心理学,教育心理学,行動科学,神経発達症などについて学んでおり,大学や公開講座等に積極的に出席・参加し,多角的・多面的に様々な知識をインプットしています。このような学びを〈生きた知識〉として息子と娘にだけアウトプットするのではなく,育児・家庭療育・学校生活等で悩み,困惑しておられる皆様方にもアウトプットしたいと願っております。そのため,〈我が家流のペアレント・トレーニング〉を当塾で講座化するなど,〈新たな学び〉と〈新たな実践〉を生かした〈新たな活動〉を展開していこうと地道に準備を進めているところなのです。




こどもの明るい未来には,保護者の存在が大きく関与しています。私たち大人がどのようにこどもたちと接しかかわっていくのかは,これまで同様に大きな課題です。それを解決していくためには,私たちを取り巻く環境や時代の変化を心身に受け留めながら,「古(いにしえ)から受け継ぐもの」と「新たに取り入れていくもの」との相互性を見極めることが必要になっていくと,私は考えています。〈教育の不易流行〉を考える時期が,まさに今,到来しているのです。






【〈教育の不易流行〉についての関連ブログ記事】

「教員採用試験合格道場―オンライン教員養成私塾「鍛地頭-tanjito-」」(鍛地頭-tanjito-)





【関連ブログ記事】

「【前編】個に応じた発達支援―ペアレント・トレーニングを採り入れてみて―」(鍛地頭-tanjito-)










息子が通う小学校の運動会にて















※2 「スペシャルタイム」とは,保護者と二人きりで,子どもが好きなことをして遊べる時間のことです。スペシャルタイムの間,遊びの主導権は子どもにあります。保護者は受容的に,非指示的に子どもにかかわります。(前掲書a,pp.45-47)



※3 物事や情報を無批判に受け入れるのではなく,多様な角度から検討し,論理的・客観的に理解すること。批判的思考法。 (コトバンク:クリティカルシンキング(英語表記)critical thinking,デジタル大辞泉の解説,クリティカル‐シンキング(critical thinking),出典 小学館)








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「鍛地頭-tanjito-」スタッフ




2019年06月22日

【前編】個に応じた発達支援―ペアレント・トレーニングを採り入れてみて―

発達支援のポイントはこどもの「個」の特性を把握することにあります。関係諸機関とも連携を図りながら,まずは保護者がしっかりとその特性を把握することが大切です。その特性も成長の時間軸に沿って変化しますから,その時,その場で必要な支援を行う必要があるわけです。そこで,今回,我が家ではペアレント・トレーニングを採用してみました。


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生きる自分への自信を持たせる「鍛地頭-tanjito-」副塾長の住本小夜子です。

我が家の「家庭療育」について,新たな展開がありました。
こどもも保護者も一緒に楽しく成長でき,「自己有用感」 に裏付けられた「セルフ・エスティーム(自尊感情)」を高められる取り組みの参考にしていただければ幸甚です。




小学2年生の息子(軽度自閉スペクトラム症)の今年度の目標は,

  1. (文)字をていねいに書く
  2. (例えば,他者との関係性を考えず,自らを優先した)自己欲求を満たす前に,やるべきこと(宿題など)を先に済ませる

これら2点です。

目標に関しては,担任の先生や通級の先生と相談しながら,本人を交えて決めました。家庭-学校-通級-放課後等デイサービス,そして6月から新たに通い始めた学童で連携し,取り組んでいます。
しかし,現実的な日々の目標達成はなかなかうまくいきませんでした…。
そこで私は,ふと目にした画像をヒントに新たなシステムを導入することにしたのです。



目次
1 新たな刺激が必要
2 それはそれ,これはこれ
3 CCQによる指示
4 兄妹で一緒に取り組む

5 新たなトークンシステムを活用した「自己評価」・「他者評価」の効果
6 次のステップに向かって



1 新たな刺激が必要


春休み中,文字をきれいに(丁寧に)書けるように練習するため,息子の興味をそそるようなテキストやワークブック等がないかと,近くの書店を訪ねました。しかし,そこに置いてあったものは,学校で使用しているドリルがほとんどで,私は「同じものをやっても,息子は関心を示さず,楽しいとは思わない。」と頭を抱えていたのでした。

そのような折,ふと目を引いた背文字。「なぞらずにうまくなる………」 この練習帳を手に取りペラペラと中身を一瞥,「これだ!!」と思うや否や,私はレジに並んでいたのです。


『なぞらずにうまくなる 子どものひらがな練習帳』.jpg
『なぞらずにうまくなる 子どものひらがな練習帳』(著者/編集:桂聖,永田紗戀,実務教育出版,2012.8)


ページをめくると文字が大きく表示されており,イラストなども入っていて,「止め」「はね」「はらい」や「角度」「ふくらみ」といった(文字をきれいに(丁寧に)書くための)技術がストーリーで表現されているので,字形がとてもわかりやすいのです!!




この練習帳に取り組み始めてすぐ,効果は表れました。なぜならば,ストーリー性をもってひらがなを練習できるという行為は息子にとって「新しい刺激」であり,読書好きな息子にとって,本を読む感覚でひらがなをきれいに(丁寧に)書く書き方を学習できるという〈学びの楽しさ〉があったからです。

注:飽くまでも,息子の場合の効果であって,すべての神経発達症(自閉スペクトラム症等)のお子様にストーリー性をもった書き方が適合するとは述べておりません。一人ひとりのお子様の特性に合ったひらがなの練習があるでしょうし,(関係機関との連携を図りながら,)お子様の特性に合った学習方法を,お子様と共に模索していくのが保護者の役割だと考えます。

ところが!! そう簡単にすべてがうまくいくことはありませんでした…。
次なる課題が発生したのです。



2 それはそれ,これはこれ


春休み中という短い期間で,ひらがなすべての書き方のコツをストーリーで覚えた息子(特性の一つに,特定のものに対する記憶力の良さがあります)。ですが,記憶しただけでは日常生活の文脈(コンテクスト)の中で,実際にきれいに(丁寧に)書くことはできないので,学校の宿題に加え,「母ちゃん宿題」として,毎日,ひらがな10種類×12文字分をノートに書くという課題を与えてみました。

記憶(インプット)したもの(情報)を如何に(活用して)日常の文脈(コンテクスト)の中で表現(アウトプット)させるか――定型/非定型にかかわらず,大人も含めて,現代,特に必要とされる能力であり,新学習指導要領の根底を為す考え方でもあります。また,記憶(インプット)したもの(情報)を繰り返し表現(アウトプット)することによって,脳内における記憶は短期記憶から長期記憶へと変貌し,(真の)知識として定着していきます。――その訓練(トレーニング)をさせる必要があると考えたのです。ベストは日常の文脈(コンテクスト)の中で,ストーリーで覚えたひらがなをより必然性をもって活用できる場があること/保護者等がそうした場を設定することです。内発的な動機でもって活用できる場に(こどもが)臨む方が自分のものになりやすいのですが,「内発的動機付けの前段階としての(短期間の)外発的動機付け」と位置付け,今回は課題を提示してみたのです。

当初,息子は「母ちゃん宿題」の提案を私が行った際,難色を示したのですが,当該の練習帳に付いていた帯(上掲の写真を参照)を見せ,「毎日練習すれば,3か月後にはこのようにきれいに書けるようになるんだって。」と掛けたことばが契機となって,「母ちゃん,ぼく,やってみる!!」と息子は意欲をもって課題に臨む態度を示すようになったのです。

それ以来,「母ちゃん宿題」に取り組んでいる息子のノートを覗いては,「この字はきれいだね,良く書けているね。」とか,「この字はこの「はね」をこんな感じにしたら,もっときれいに書けるんじゃない?」とか,所謂学校教育で言うところの「形成的評価(≒学習の途中で行う評価)」を入れながら,毎回,宿題が終了したところでは,その回,息子が書いたすべてのひらがなを点検し,良いところは褒め,直すべきところは助言する(「総括的評価(≒学習の最後に全体を通じて行う評価」)という過程を繰り返したのです。


「母ちゃん宿題」ノート.jpg
「母ちゃん宿題」ノート


ところが,「母ちゃん宿題」は息子にすれば丁寧な――まだ,本当のところは「きれい」とは言い難いのですが,――文字で書いているのに対して,学校の宿題や連絡帳に書いてある文字は読むのですら困難な状態のままでした。定型のお子様ならば,「母ちゃん宿題」できれいに(丁寧に)ひらがなを書く練習をしているのだから,その他の宿題ノートや連絡帳もきれいに(丁寧に)書かないといけない。」と考えられるのでしょうが,息子はそうはいきません。「「母ちゃん宿題」はきれいに(丁寧に)書こう!」と激励すれば,「母ちゃん宿題」だけはきれいに(丁寧に)書こうと考え(情報処理をし)て,それだけでミッションはコンプリートしてしまうのです。これが息子の特性なのです。それでも「どのノートも,きれいに書けるコツを思い出しながら,ゆっくり丁寧に書いてみよう!」とその都度指導するのですが,何度やっても「母ちゃん宿題」以外は,乱れた文字になってしまうのです。それは,息子自身が「宿題ノートや連絡帳の文字もきれいに(丁寧に)書かなければならないのだ。」と納得していないことが原因と考えられます。


宿題(漢字ドリルのノート).jpg
宿題(漢字ドリルのノート)


特に,宿題ノートは日によって, 「できる・できない ( 自閉スペクトラム症の特性) 」の差が激しく,それに比例するように文字のきれいさ(丁寧さ)も変化します。そこには,その時の心の安定具合が大きく関連していると思われます。学校で息子の身に起きた出来事にも左右されますし,学校から帰宅して後の息子の言動に対する私の指示の出し方でもそうです。そこで私は,まずは,息子に対する私の指示の出し方を変えてみようと考え,次なる策を打つことにしたのです。


3 CCQによる指示


CCQとは,Calm(穏やかに),Close(近づいて),Quiet(静かに)のことです。これは,ペアレント・トレーニングの技法の一つである「効果的な指示の出し方」に用いられています。

本題に入る前に,ペアレント・トレーニングについての説明を引用しておきます。


ペアレントトレーニング: 発達障害者の親が自分の子どもの行動を理解したり、発達障害の特性をふまえた褒め方やしかり方を学ぶ<ママ>ための支援。


このペアレント・トレーニング・プログラムの基本理念と枠組みは,米国マサチューセッツ大学のバークレー博士(R.A.Barkley )の研究と,カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でフランク博士(F.Franke)の指導のもと1983年からペアレント・トレーニングを実施しているウィッタム女史(C.Whitham)のプログラムを参考にして国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部のチームによって作成されたものです。日本の家族に適用しやすいように,児童の発達にかかわる相談や療育の機関で実施しやすいようにと意図して作成したプログラムです。
 

『こうすればうまくいく 発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル』,監修 上林靖子,編集 北道子・河内美恵・藤井和子,中央法規出版株式会社,2009年4月 ,p.1…a


一般的に,このトレーニングの対象者は「発達障害を持つこども」だけと思われがちですが,決してそうではありません。「特別支援教育」(療育)こそ,すべてのこどもに必要な教育なのです。ペアレント・トレーニングはそのフィールドにあるトレーニングと言えます。


特別支援教育を推進していくことは、子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導及び必要な支援を行うものであり、この観点から教育を進めていくことにより、障害のある子どもにも、障害があることが周囲から認識されていないものの学習上又は生活上の困難のある子どもにも、更にはすべての子どもにとっても、良い効果をもたらすことができるものと考えられる。



このプログラム(筆者注:「 ペアレント・トレーニング・プログラム 」のこと)は,子どもの行動に注目し,よりよいコミュニケーションを通して子どもが適切な行動をとれるように援助するためのものなのです。ですから子どもに障害や問題行動がなくても育児不安を抱える保護者など,子育て全般に適応できるものとなっています。

前掲書a,p. 10


このように,特別支援教育は神経発達症(発達障害)の有無にかかわらず,すべてのこどもの心身の成長にとても重要な教育だと言えるのです。したがって,我が家では息子だけではなく,娘(4才)にも特別支援教育を援用したアプローチを行っています。



では本題に戻ります。

私は,このペアレント・トレーニングを参考に,息子への指示の出し方を変えてみました。方法は以下のとおりです。


[Sayosan].png


一部ではありますが,CCQの効果を実感した私は,息子への指示出しについては,当面,この方法を試みてみようと決めたのです。



4 兄妹で一緒に取り組む


文字をきれいに(丁寧に)書く認識を持たせるため,「文字はゆっくりていねいに書きます。」と息子に指示してきました。「文字を見れば,その人がどのような人なのか分かる」ときれいに(丁寧に)書く理由も説明しました。急に,何もかもうまくいくことはないので,目標に取り組む息子も,指示を出す私も忍耐の日々です。

小学2年生に進級してすぐに設けていただいた面談で,家庭で息子の連絡帳を確認する際に,私も一緒に丸つけやご褒美スタンプを押すことができるよう担任の先生にお願いしました。しかし,あまり効果が見られず,何かもう一工夫必要だなと思っていました。

そんな時,ふと思い出したのが「野々内あんざんそろばんスクール」さんのFacebookへの投稿です。塾長の野々内由香利さんは, 塾生に月1回のご褒美として教室にガチャガチャを設置されているのです。


筆者注:野々内由香利様からは,そのご実践を本ブログ記事に掲載させていただく旨のご諒解を賜っております。この場をお借りして,厚くお礼申し上げます。


これなら,息子だけではなく娘も一緒に取り組むことができる!! 是非ともこのシステムを我が家に導入しようとガチャガチャを購入し,加えて,ご褒美シールノートも購入しました。そして,こどもたちと一緒にそれぞれ目標を3つ考え,また新たなトークンシステムに取り組む準備を整えました。


息子と娘の目標(トークンシステム).jpg
息子と娘の目標(トークンシステム)


購入したご褒美シールノート.jpg
ご褒美シールノート


自宅に購入したガチャガチャ.jpg
自宅用に購入したガチャガチャ




次回,「新たなトークンシステムを活用した効果」及び「次のステップに向かっての取り組み」等を【後編】で記述いたします。お楽しみに!!


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2019年05月03日

自閉スペクトラム症である息子本人が障がいを受容したとき


生きる自分への自信を持たせる「鍛地頭-tanjito-」副塾長の住本小夜子です。
前回のブログ記事から,2週間以上経過してしまいました。申し訳ございません。




私事ではありますが,生活心理学とコミュニケーションについての勉強を修了し,現在,新たな資格取得に向け,さらに勉学に励んでおります。そちらに時間を取られてしまい…。(塾長ですか? 何やらまた新たな企画をするそうで,準備に追われています(笑))




さて,今回は,前回の記事に関連して,【本人の障がい受容】がテーマです。本人に伝えるのか? と不審に感じられる方もいらっしゃるでしょう。(何を隠そう私もその一人でした。)ある出来事が契機となって,私の考えは変わったのです。(息子が,)自己についてしっかりと認識することが,今後の息子自身の生き方に良い意味で影響を及ぼし,さらに先のことを想えば,人生に厚みが出てくるのではないのかと。




是非,ご一読ください。そして,ご批正をお願いいたします。








【本人に診断を伝えるべきか】




平成30年7月20日(金)に放送された,『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS,毎週金曜日,夜8:57~)において,所謂発達障がいが取り上げられたのをご存知でしょうか? この放送では,ADHD(注意欠如・多動症(注意欠如・多動性障がい))と診断されている人気モデルで俳優の栗原類さんと,同じくADHDと診断されている母親・泉さん親子が出演され,症状に対する対応の在り方や,泉さん独自の子育て論が語られました。




泉さんが試行錯誤されながら実践を積み重ねられた「8つのマイルール」。その放送の中で,私は私なりに学ばせていただき,考えさせていただきました。




自分自身の特性を早期の発達段階でしっかりと自覚させることで,苦手なところを認識させる。そして,苦手なところを脳裏の片隅で意識させながら,良いところを褒めるなどしてしっかりと伸ばす。「いけないことは,いけない。」と毅然として,粘り強く丁寧に指導する。そうすれば,大人になった時の艱難辛苦が軽減される。




この放送を拝見して後,日々成長していく息子のために,「あなたは自閉スペクトラム症なのです。」との主旨を,(表現の仕方には工夫するよう留意して,)診断が下った際に伝えるべきだったと痛感したことについては,言を俟ちません。




参考
・『ブレない子育て  発達障害の子、「栗原類」を伸ばした母の手記』, 栗原泉,KADOKAWA,2018.6.14
・『発達障害の僕が 輝ける場所をみつけられた理由』, 栗原類 , KADOKAWA,2016.10.6








息子に伝える契機となった出来事




「あなたは自閉スペクトラム症です。」との主旨を息子に伝えたのは,先日の秋季休業(秋休み)の間でした。(広島県東広島市の公立小中学校は前期後期の2学期制となっており,10月上旬に5日間の休みがあります。)秋季休業までに,息子に伝える契機となった出来事が2つありました。




1つ目は,息子が「自閉スペクトラム症」という言葉を知っていたことです。




平成30年9月末。学校からの帰宅後,その日に学校であった出来事を,いつものように息子と会話していた際に,「僕は,自分が自閉スペクトラム症って知っているよ。」と突然言われたのです。この瞬間,正直に述べて,とても驚きました。




[なぜ「自閉スペクトラム症」という言葉を知っているの?][誰かに何か言われているの?] とマイナス思考が脳裏を過りました。ですが,瞬時に,[息子自身にしっかりと現実を伝える,好機なのかもしれない。]と前向きな考えに変わったことは事実です。[「自閉スペクトラム症」という言葉を知っているのならば,それについて正しい知識を教えることができる。その知識があれば,息子本人が嫌な思いをすることも少しは軽減されるのではないか。]と思いました。




2つ目は,通知表の評価から「自閉スペクトラム症」の特性が読み取れたことです。




前期の終業式を終えて帰宅した息子は,私に通知表を見せてくれました。





前期後期制の小学校における通知表
息子の通知表







通知表は見開きになっており,左半分には,学習の様子(各教科ごと)についての評価があり,右半分には,学校生活の様子(責任感,思いやり・協力など)についての評価があります。




まず,この通知表を見て感じたこと。それは,私が小学生の頃に比べて簡略化されていること。(飽くまでも私の印象です。)マイナス(今後の改善点など)と捉えられるような評価が見受けられないことです。(良い点をさらに伸ばそうとする観点から評価をしていただいています。)昔の通知表には,必ず改善点など,これからの目標とされる記述がありました。しかし,評価の考え方が変遷したことで,記述内容も変わったことを知りました。





現在の学習評価は,目標に準拠した評価を行っているため,基準に達しているかどうか(学習の到達度)という観点で行われる絶対評価です。


参考 「学習評価の現状と課題」,高木展郎,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第2回),平成29年12月11日







短い期間の中で,上述した2つの出来事が重なり,この機会に「自閉スペクトラム症」について話してみるべきだと意を決し,息子に伝えてみることにしたのです。








息子が「自閉スペクトラム症」を知った経緯




「僕は,自分が自閉スペクトラム症って知っているよ。」と唐突に言われ,私は本当に驚きました。どこでどのように知ったのかを聞いてみると,次のような経緯がありました。




まずは,私の業務においてよく用いている,「自閉スペクトラム症」という言葉が,日常生活の中で,自然と息子の頭の中に吸収されていた※1ことです。(「偶発学習(incidental learning)」です。)




※1 息子の一つの特性で,気になることやこだわりのあるものに対しての記憶力は,人並み以上に優れています。




業務上,自学のため,パソコンで参考資料等から学ぶときは,読み上げ機能を使って音声として流して聴いていますし,仕事部屋には参考書などが多数置いてあるため,息子の耳に入りやすい,目につきやすい環境にあったのだと思われます。(息子への配慮を欠いていた点で,反省すべきところでもあります。)




次に,利用している放課後等デイサービスにおいて,同じく利用者の親しい男子高校生と,「自閉スペクトラム症」について会話を交わした事実があったことです。




「自閉スペクトラム症って,何回やっても覚えられないことでしょ?」
と言われた。
僕は,「そうだよ。」と答えた。
「自閉スペクトラム症は悪いことだ。」と言われた。
だから,僕は悲しくなった。




「自閉スペクトラム症は悪いこと」と言われた息子の感情は,素直で正直なものだと思います。息子が悲しくなったその背景には,ある特定の事柄について,「何回言われてもできない」「同じ失敗を何度も繰り返してしまう」といった日常的な自らの現状※2を,息子自身が実感していること,そして,そのことを親しい先輩が「悪いこと」として認識しているのだという現実に出くわしてしまったことがあります。




※2 発せられる言葉,表情,視線,雰囲気などから相手の気持ちを汲み取ることができないために,相手(周囲の人々)から顰蹙を買うことがある。その一つの様相として,自分が興味を持っていることを話す時には饒舌になり,話を止めようとせず,しかも,(静謐が求められる場であっても)徐々に考えられないような大声になることを挙げることができる。また,スケジュール管理がとても苦手である。
「自閉症スペクトラムの息子のやる気を引き出すスケジュール管理」(住本小夜子,BLOG「鍛地頭-tanjito-」,2018.9.17)




私は息子と,次のような対話をしました。




私 :「誰でも,得意なこと,苦手なことがある。」
   「○○(息子の名前)の得意なことは何?」
息子:「母ちゃんが辛いとき,お手伝いをすること。」
私 :「そうよね。いつも助けてくれるよね。ありがとう。」
私 :「じゃあ,○○(息子の名前)の苦手なことは何?」
息子:「きれいに字を書けないこと。」(特性の一つです。)
私 :「そうか…。でも,毎日頑張って練習しているよね。」
   「母ちゃんは,
    ○○(息子の名前)が頑張って練習しているのを知っています。」
   「だから,きれいに字が書けないことを悪いことだとは思いません。」
息子:うんうんと頷く。
私 :「母ちゃんの苦手なことは虫を触れないことです。」(笑)
    「悪いことだと思いますか?」
息子:「思わない。僕が助けてあげるから。」
私 :「ありがとう。
    だから,母ちゃんも○○(息子の名前)が困っていたら助けます。」
   「苦手なことは悪いことではないんよ。
    練習したり助け合ったりすればいいんです。」
息子:「わかった。ありがとう。」




虫の例は適切でないかもしれません(笑) しかも,母親とだけの助け合いでは,いつまでたっても,息子は自立(母子分離)できないわけです。小学校1年生の息子(発達段階と「個」としての特性を持つこども)を考慮しての対話でした。




対話を終えた息子の表情は,柔和そのものに変わっていました。ほっとしたのでしょう。「母ちゃんにちゃんと教えてもらったから,もう大丈夫!!」そう言って,息子は子供部屋に戻り,にこにこの笑顔で,宿題に取り掛かりました。








息子と一緒に短所を認識する




「自閉スペクトラム症」は「悪いことではない」と知った息子。その息子本人の障がい受容に際して私がまず行ったことは,苦手なこと(短所)を認識させるため,息子と一緒に通知表を見て,感じたことをそのまま表現させることでした。




学習の様子(各教科ごと)については,できる(○),もう少し(△)の2段階で評価されており,すべて「○」の評価となっていました。学校生活の様子(責任感,思いやり・協力など)については,よくできる(◎),できる(○),もう少し(△)の3段階で評価されており,10項目中,「◎」が2つ,「○」が7つ,そして「△」が1つという評価でした。




息子は通知表を一瞥し,「あれ?! ここだけ△になっとる!!」と声を上げました。それが私のねらいでした。その項目は,「公共心・公徳心(筆者注:きまりを守り,人に迷惑をかけないように心がけて生活する)」 でした。自閉スペクトラム症の息子にとっての特性の一つが,「△」に表れていたのです。





自閉スペクトラム症の子どもは臨機応変に対応したり、空気を読んだりすることは苦手ですが、具体的に示されて納得できたルールや決まりごとを守ることは得意です。家庭や学校生活での決まりごとを一定のルールとして示し、守るよう教えましょう。その際、ルールを途中で急に変更・修正すると自閉スペクトラム症の子どもには理解が難しくなります。


「ソーシャルスキル」:社会生活を助ける2つのスキル,大塚製薬 こころの健康情報局 すまいるナビゲーター







この「公共心・公徳心」の評価について,息子に問い掛けてみました。




私 :「なんでここだけ△なんじゃろう?」
息子:「…。僕が,我慢ができていないから…。」
私 :「何の我慢ができていないの?」
息子:「走ったらいけないとか…。」




確かに,「校舎に面している坂道を走ってはいけない」と注意されているにもかかわらず,息子は走って転げ,何度も怪我をしており,「数日間で大小何枚の絆創膏を貼っているのか?」ということがありました。具体的に示されたルールだったものの,息子は納得していなかったのです。




転げて怪我をし痛い思いをしているのは,もちろん息子本人です。しかし,そこに誰かいて巻き込んでいたら…。「人にけがをさせてしまうのではないか。」「迷惑をかけて嫌な思いをさせるのではないか。」 といったように,予測することが息子には難しいのです。




以後,この「△」の評価項目が,自宅で行っているトレーニングに結びついていきます。








学校と自宅で共通するルール




自宅のリビングと子供部屋には,「だいじなやくそく」と題して,これら3点だけは少なくとも徹底して守ろうという我が家のルールが貼ってあります。これまでは,項目だけを視覚化していたのですが,一つ一つの項目に対し,なぜ守らないといけないのかという理由を付け加え,修正することにしました。








自閉スペクトラム症のための約束を書いた貼り紙
自宅のリビングと子供部屋に貼ってある「だいじなやくそく」







この「だいじなやくそく」の,「3 じかん・ルールをまもる」は,通知表の「△」の評価項目と同じルールと言えるでしょう。まずは,学校でも自宅でも,同じルールに取り組んでいることを,息子に認識させました。




私 :「通知表の「△」と同じことが,この家のどこかにも書いてあるね。」
息子:「えっ?! どこだろ?」
私 :「さがしてごらん。」
息子:「…(張り紙を指さして)あった~!!」




学校でも自宅でも同じルールについて取り組んでいる状況を知った息子に,なぜこれが必要なのか,その理由を納得するまで丁寧に説明しました。生きていくうえで,きまりやルールはどこにでも存在する。それは自分一人ではなく,みんなで守っていくものである。そして,特に,息子にとって必要なスキルであること。また,何度も繰り返しトレーニングをする必要があること。




なぜならば,「あなたは自閉スペクトラム症だから。」




息子が苦手なこと(短所)をしっかりと認識させ,だから,トレーニングをしているのだと教え,それは大人になったときに困らないためであると伝えました。




勿論,息子には言っていませんが,無理をさせようとは思っていません。「やはりできないんだ。」との意識を強度に植え付けることは,不登校・引きこもりやうつ病・統合失調症などの二次的な問題(二次障害)を起こす可能性があるからです。





苦手なことに対しては無理をさせず、本人が「できない」と伝えられるようにします。成功体験を積み重ねていくことで自信と自己肯定感を育むことにつながります。


「自律スキル」:社会生活を助ける2つのスキル,大塚製薬 こころの健康情報局 すまいるナビゲーター








長所にも注目し二次的な問題を防ぐ




次の引用は,本人の障がい受容にかかわる大切なことの一つを語っています。





本人に診断を伝える目的は、本人が長所や短所をふくめていろいろな特徴をもつ自分自身について、誰よりもよく理解し、自信をもって前向きに生活していってほしいからです。


「本人に診断を伝えることの意義」,「こんなとき,どうする」:「本人に発達障害の診断を伝える」,厚生労働省 国立障害者リハビリテーションセンター







息子の得意なこと(長所)について,通知表で「◎」と評価された項目を,息子と一緒に見てみました。




「健康・体力の向上(筆者注:心身の健康に気をつけ,運動に進んで取り組む)」
「勤労・奉仕(筆者注:進んで学級の仕事や掃除・奉仕活動をする)」
総合所見には,「毎日,気持ちの良い挨拶をだれにでもすることができ,校長先生に「あいさつお手本賞」をいただきました。」と記述されていました。








男児が学校の校長先生からいただいたあいさつの賞状
出典 「人と人とをつなぐ「あいさつ」―〈つながり〉を求めて―」(住本小夜子,当塾公式ホームページ,2018.5.14)







[僕には良いところもたくさんある。継続して,もっと上手にできる(・よくなる)ように頑張ってみよう!!]といったように,意欲的になれる支援を行うことは,二次的な問題(二次障害)の防止に深くかかわります。





自閉スペクトラム症への対応で最も大切なことは、できるだけ早く子どもの特性に気づいて理解・支援し、ストレスを感じにくい生活習慣や環境を整えて、二次的な問題を最小限にとどめることにあります。


「自閉スペクトラム症の「二次的な問題(二次障害)」を防ぐ」,大塚製薬 こころの健康情報局 すまいるナビゲーター







「一生懸命やっているのにうまくいかない」「僕(私)はダメな子なんだ」と,自分を追い込んでしまうことのないように,「あなたにはこんなに素晴らしいところがあるんだよ」と,長所もたくさん認識させることが必要なのです。そして,子どもの可能性に親が逸早く気づくことも重要だと考えます。この子はどんなことが得意なのだろうかと,可能な限り,様々なことを経験させて,その中から得意なことを,まずは親が発見してあげるのです。身近にいるはずの親だからこそ,誰よりも真っ先にできることだと思います。




現在,息子が意欲的に取り組んでいることは,わからない言葉がある場合は自分で辞書を引いて調べること。小学校でのプログラミング教育に備えて,ローマ字を習得すること。




これから先,息子は,少しずつではあっても,周囲のこどもたちと自分自身との違いに,きっと気づいていくことでしょう。その結果,また,悲しい思いをすることだってあるでしょう。「(周囲の)みんながわかる(できる)ことが,僕にはわからない(できない)。」そのとき,(息子の場合は勉強に関することですが,)自学による既習の知識や技能が,「僕にもわかる(できる)」といった息子の自信に繋がってくるのではないのかと考えています。打算的かもしれませんが。




長所をしっかりと伸ばしながら,短所も無理のない程度にトレーニングする。毎日,根気強く,繰り返し,繰り返し同じことに丁寧に粘り強く取り組むことが,将来の息子のためになると信じているのです。








正しい「自閉スペクトラム症」を知った息子の目標




「自閉スペクトラム症」は「悪いこと」ではない。自分の長所と短所,自分の特性,つまり,自分自身を知ることが大切。




息子の認識は変容しつつあります。その過程で息子が立てた新たな目標は,「(通知表の)△を○にする」です。目標を達成するために,特に取り組むことは,「だいじなやくそく」の「2 がまんする」と「3 じかん・ルールをまもる」だそうです。




現在,息子の気分は穏やかで清々しく,日によって多少の波はありますが,基本的には,こころが落ちついた状態で,スケジュール管理や目標達成に向けたトレーニングなどを行っています。また,得意なことに関してもこれまで以上に熱心になり,息子の自己有用感,自己肯定感(総じて,自尊感情)を高めることに繋がっています。




少し前までは,息子に診断の結果を伝える選択肢すら持ち合わせていなかった私なのですが,息子の特性に親子でしっかりと向き合っていくためには,本人の障がい受容は不可欠なことだったのだと実感しています。また,上述したタイミングで息子に伝えることができたのも,結果的に良かったのだとも思います。





「本人に最適なタイミングで」、「本人がわかることばで」、「本人が納得できる説明の仕方で」、支援者がもつ情報を本人と共有するためにおこないます。


「本人に伝えるタイミング」,「こんなとき,どうする」:「本人に発達障害の診断を伝える」,厚生労働省 国立障害者リハビリテーションセンター







どうしても,息子のこころの状態には波がありますから,今後もその状態に応じた適切な伝え方で,親子共々,息子の特性に向き合っていきたいと思います。





診断を本人に伝えるのは、悪い知らせを伝えるためではありません。これまでうまくいかなかったことはどうしてだったのか、またこれからどうすればもっと自分らしく、そしてよい結果につながるのかをきちんと理解し、これまでとはちがった視点で自分を見つめなおすきっかけにしてほしいからです。


「本人に診断を伝えることの意義」,「こんなとき,どうする」:「本人に発達障害の診断を伝える」,厚生労働省 国立障害者リハビリテーションセンター







人それぞれが自分らしく生きていくために,自分を見つめ直すという作業(メタ認知)は,誰にとっても不可欠であると,私は考えます。定型発達であろうが,非定型発達であろうが。




生きていれば,なにかしらの壁にぶち当たることはあるでしょう。それを一緒に乗り越えていける人と,情報を共有し,共に歩み続けられる関係を築いていくことも大切です。理解してくれる人は必ずいる。だからこそ,自分自身をしっかりと知る必要がある。




こうして人は少しずつ,日々成長していくのだなと,今日も秋晴れの澄んだ青い空を眺めながら,ふともの思いに耽るのでした。








秋晴れの広島の空
広島の秋の空 撮影者 住本小夜子 2018.10.18







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